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【編集後記】TCAAと光の演出(納入事例:トーキョーアーツアンドスペース様)

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編集後記のコーナーです。



このコーナーでは、納入事例でご紹介させていただいた会社様や店舗様の、

取材にご協力いただいた際に伺ったちょっといい話やこぼれ話など、

スペースの都合で紹介しきれなかったお話を紹介していきます!

(納入事例まだ見ていないよ、見てみたいよという方は、コチラからご覧頂けます!)


今回は、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース様(以下、TOKAS様と表記)と、

TOKAS様が東京都様と開催している、Tokyo Contemporary Art Award(以下、TCAAと表記)をご紹介します!

照明の演出は、空間演出家の山本圭太様が担当されました。



皆さま、取材ご協力ありがとうございました!!




2021年3~6月、TCAA受賞記念展が東京都現代美術館で開催された




TOKASとTCAAとは?


TOKAS様は、公益財団法人東京都歴史文化財団によって運営される施設(アートセンター)であり、

東京発のアート文化の発信と振興を目的として様々な活動をされています。




そして今回のTCAAも、その活動の一環です。




中堅のアーティストの中でも、

海外に対して自身の創作を発信する意欲のある人を対象に、

審査・選考し、受賞者の創作活動を支援し、

東京から世界にアートを発信する、

というのがTCAAの主旨です。



選考から、発表、制作などを含めると3年ほどのスパンとなる長期にわたる活動支援で、

そして今回の受賞記念展は、その締めくくりのイベントなのでした!




展示会場前の写真





今回のTCAAの受賞者は下道基行様と、風間サチコ様です。




ここからは、実際の展示の状況を詳しくご説明します。

 

展示状況1(下道基行様作品)

 
下道基行様の展示エリア






このエリアに、SORAAのLED電球をご採用頂きました。

(長いコードのペンダントライトにSP30Sが使われています。)




下道様の創作は、旅とその行く先々でのフィールドワーク、発見自体をアート化させる表現に特徴があります。


海図と採取した水を展示するインスタレーション作品

 




その為、このエリアでは、展示作品のそれぞれが海に点々と浮かぶ島の様にゾーニングされ、



また照明が、それぞれの世界が独立している事、その”孤島の雰囲気”をさりげなく強調するものとなっています。




光の演出によって、存在感と孤独感を強める展示

 






そして、”思索”を象徴するような研究室のような雰囲気のレイアウトもまた興味深いです。




行動と思考を対比する展示レイアウトと照明効果の調和

 






展示状況2(風間サチコ様作品)


風間サチコ様展示エリア

 





風間様の創作は、見る人を圧倒するスケールの大きさと、木版画特有のタッチの鋭さを活かした社会風刺的な表現に特徴があります!




圧倒的なスケール感で空間を支配する

 
絵のサイズ感と空間のスケール感にのみ目が行きがちですが、

じつは、ここにも光の演出のワザが隠されています。




じっくりご覧頂くと、ごくわずかに右側の展示の方が照度が低くなっていることが、壁紙の明るさからわかりますよね(!)

(と言っている私ですが、実はご説明頂くまで照度の差には全く気付きませんでした…(^^;))




この照度の差は、それぞれの展示が一番よく見えるように配慮しての事だそうです。


こういった照明の選択に始まり、配置や照射方法、照度など様々な要素がきちんとデザイン(設計)されることで、

良い展示空間というのは実現するんですねー!






そして、風間様の作品・展示のもう一つ特徴的に感じたところは、

版画作品と版木が同時に展示されているところです。


上が刷られたもの、下が版木

 



彫刻刀の一刀一刀の表情が見える

 

版画というと、”刷られたものだけが作品”という風に思っていた私にとって、

この展示手法はすごく新鮮で、また、版木に残った彫り跡の一刀一刀を見ると、

制作の過程や苦労、作品に込めた思いなどが伝わってくる様で、非常に興味深く感じました。




そしてここにもまた、光の演出がありました。



大きな作品の全体を見たい、俯瞰したい時は、人は遠くから作品を眺めますが、

細部に意識を向けようとすると、自然と人と作品の距離は近くなります。



そうすると、照明の配置によっては見る人自身の影が作品にかかってしまって、

鑑賞しづらくなる場合があるのです。




顔を近付けたときに見る人の影が作品に落ちない、

じっと見た時に版木の凹凸がしっかりと見える、



こういった事も、照明の選択や配置、そして照射方法などの様々な要素がきちんとデザイン(設計)されることで、

はじめて実現する”演出”なんですね!




照明について山本圭太様に意識されていることを伺うと、

「自身が舞台照明なども手掛けていることが、大きなヒントになっている」

との事で色々なお話を伺う事が出来ました。



その中で、私にとって特に印象に残ったなコメントは、

「いい照明を考える時、空間的な美しさや作品の見栄えを良くする視点と、見る人にとっての見やすさを良くする視点では、出てくる答えが違う場合がある。」

「舞台照明は、相手からどう見えるか、どのように見てほしいかを強く意識するし、意外と店舗施設照明ではマイナーなワザなどがあったりもする。」

「舞台と店舗施設の照明を両方知っているから、感じられる事や気付けること提案できることがあり、それが自分の独自性になっていると思う。」

などでした。



私は商業施設や店舗の照明に携わることが多いので、舞台演出家ならではの”観覧者目線”を持った光の演出のお話は非常に新鮮でした。

今回は、いつもとまた違った照明設計の妙を感じることができました!!



改めまして、お時間頂戴しありがとうございました!!


おわりに

さて、今回の編集後記は以上で終わりです。

いかがでしたでしょうか。


展示を見に行った時には、作品にしっかりと集中して頂くのが照明設計と演出の大目的ですが、


時々、その展示空間自体のデザインされた美しさや機能性にも目を向けて頂くと、


嬉しい気持ちになります!

 

ではまた!

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